読解力のない子どもたちは今-子どもの未来にできること
読解力は、国語はもちろん、全ての教科に必要であり子どもにとって大切な力です。
さらに、読解力は人とのコミュニケーション力に直結するものです。
読解力を伸ばすことは、子どもの生涯にわたるコミュニケーション力を育てることにつながります。
読解力がない子ども達は読解力のある子ども達と比べてどのようなことに苦労してしまうのでしょうか。
子どもの読解力を育てるにはどのようなことに気をつけていけば良いでしょうか。
1 『教科書が読めない子どもたち』の現状
AI時代が到来した今、子どもたちの読解力がより重要となってきています。
A Iは、人間の子どもと異なり、英語の単語や世界史の年表を覚えること、正確に計算を行うことは得意ですが、教科書に書いてあることを正しく理解するなどの読解は苦手です。
A I時代が到来した現代においても、A Iが代わりにできない仕事とはA Iが苦手な分野であると予想できます。
そのことから子どもの読解力を身につけておくことが重要であるといえます。
なぜなら、A Iは読解が苦手だからです。
しかし、活字離れが進んだ昨今、読解が苦手という子どもが増えています。
日本の中高生の子どもは、英単語の暗記や計算などはできても、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正しく理解できていない子どもが多いという実態があります。
子どもに読解力を意識的に身につさせようとしなければ、なかなか身に付きません。
どのようにすれば子どもは読解力を身につけていけるでしょうか。
(参考:『教科書の読めない子どもたち』(新井紀子著))
2 幼児期からの子どもの語彙力
子どもの読解力は、語彙力との相互作用で伸びていきます。
つまり、語彙力がある子どもは読解力もあり、読解力がある子どもは語彙力を増やしていけるという好循環が見られます。
逆に、語彙力がない子どもはなかなか読解力がつかず、読解力がない子どもは語彙力が身につきません。
言語学習についての研究を行うヴァーホーヴェンらは、小学1年生の子どもの語彙力の差は、子どもが小学6年生になってもほぼ固定されたままであるということを明らかにしています。
幼児期から小学校1年生にかけて習得した語彙が多い子どもは、ずっと語彙力が高く、言語能力が高い子どもであるということです。
このことから、子どもの読解力を身につけるためには、子どもが幼児期から語彙力を増やしていくことが大切だということがわかります。
3 読書時間の二極化
子どもの語彙力や、読解力を身につけるためにも、子どもに読書をしてほしいと思う親も多いでしょう。
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が子どもたちの読書時間について調べています。
学校がある日に子どもがどのくらい本を読んでいるかという設問に対する回答を以下に示します。
小学校3年生のまでの子どもについては保護者が、4年生以降は子ども本人が回答しています。
結果は、平日に子どもが本を読む時間の平均は
小1の子どもで15.0分、
小2の子どもで16.2分、
小3の子どもで17.6分、
小4の子どもで20.4分、
小5の子どもで22.3分、
小6の子どもで23.4分
となっています。この結果から、子どもの読書時間の平均は年々増加していることが読み取れます。
しかし、子どもの学年が上がるごとに、全く読書をしない(0分)という子どもも、長時間読書をする子どもも、どちらも増加しています。
つまり、子どもの読書時間は二極化しているという結果がわかります。
この子どもの読書時間の二極化は、子どもが小学1年生の時から始まっているということもわかっています。
ここから、子どもに読書習慣をつけさせるには、子どもの幼児期や小学1年生のうちから読書習慣をつけることが大切であることがわかります。
子どもに早いうちから、読書習慣をつけさせることで、子どもの学年が上がっても読書をするように育っていきます。
4 読解力をつけるために常に子どもに読み聞かせ
幼児期の子どもの語彙力や読書習慣のために、日頃から子どもに読み聞かせをすることはとても効果的です。
「子どもへの読み聞かせはどのくらいの頻度で行えば良いのか」という疑問を持つ親は多いです。
特に、「子どもに毎晩行なった方が良いのか?」という質問がよくあります。
毎晩、子どもに読み聞かせを行うのはもちろん大切です。
むしろ“毎晩”では足りず、“常に”子どもに読み聞かせをするくらいの心持ちでいることをお勧めいたします。
多忙な毎日の中で、実際に“常に”子どもに読み聞かせをすることはできません。
子どもに読み聞かせをする優先順位を高く設定することが重要ということです。限られた時間の中で、できるだけたくさん子どもに読み聞かせをしてあげることで、子どもも本を読みたくなり、習慣化していきます。
5 気持ちについて子どもに問う習慣
絵本の読み聞かせが定着し、子どもが内容を理解するようになったら、子どもに登場人物の気持ちについて質問してみると良いでしょう。
「この子どもは今、どんな気持ちかな?」
「なんでこの子どもはこうしたのかな?」
というように、登場人物の心情について質問し、子どもと一緒に考えるようにします。
子どもが人の気持ちを理解しようとすることは、今後のコミュニケーション能力にとても良い影響を与えることができます。
子どもがその後の長い人生において、人間関係をうまく構築できるようになることにつながります。
また、国語の長文読解では、登場人物の気持ちを問う問題が頻出ですので、子どもがその訓練を行うことにもなります。
6まとめ
今回は、子どもが幼児期から小学校低学年において読解力を身につける大切さや方法についてご紹介しました。
急速に、子どもの読解力を伸ばすことは難しいことです。
毎日の子どもへの絵本の読み聞かせなどを通して少しずつ伸ばしていきましょう。
子どもに絵本を読むときには親も絵本を楽しみ、親子で一緒に絵本に触れるようにすると、さらに子どもは楽しんでくれます。ぜひ、試してみてください。